浮気・不貞の話㉑（夫の浮気）パート１

調査結果：白

依頼者とターゲット

◆　依頼者は６０代半ばの女性。

◆　ターゲットは依頼者の夫（以下、夫（対象者）と記す。）

序章

時期は３月。

もうすぐ冬が終わり春が来ようとしている時期ではあるが、東北の寒い日は変わらず続いている。

調査案件が滞り、暇を持て余す日々が続いていたが、ひとりの女性が事務所の戸を叩く。

推定６０代半ばもしくは後半くらいの女性。夫の浮気調査を依頼してきた。

いつもなら上司が打つ合わせを行うところだが、他県の打ち合わせと被り、今回は私が直接依頼者と打ち合わせをすることになった。

上司は依頼者との電話で大まかに依頼内容は聞いており、依頼者の被害妄想気味なところがあると私に告げたが、ここ最近の売り上げがよくないことから浮気している可能性は低いと判断していたが、できるだけ受件して売り上げがほしいと私は言われていた。

それを思い出し、打ち合わせにのぞんだ。

確かにぶっ飛んでいる内容だった。

夜中に依頼者と暮らす自宅に、夫（対象者）が自分の部屋に女を連れ込み性行為をしているという。

依頼者は密かに夫（対象者）の部屋にICレコーダーを設置し、喘ぎ声なる音声を録音したとも言っている。

浮気相手と思われる女性（以下、女性Aと記す。）は、依頼者の家から数件離れたご近所さん。４０代前半のシングルマザーの女性で、仕事は町内で居酒屋を経営している。

また、自宅に連れ込むだけではなく夫（対象者）もしくは女性Aの車で人気のない公園等の駐車場に行き、『車の中でイチャついているのではないか？夫（対象者）の車に仕掛けたGPSでわかったんです！』っと依頼者は私に言う。

『な・・・なるほど～』

私がよく使う口癖がでた。

お歳の割に探偵顔負けの行動力だな！？と思いつつ、打ち合わせを続けた。

いろいろと疑問なところはあるが、普通に聞いていれば、ICレコーダーの音声・車に設置したGPSの結果で、浮気していてもおかしくない状況ではあるが、謎は深まるばかりだ。

ICレコーダーの音声はあるのか私は聞いてみたが、打ち合わせ時は持ってきておらず、依頼者が普段使うPCに保存してあるとのことだった。

本当にその喘ぎ声が入っていた場合や夫（対象者）が部屋で独り言をしゃべっているかもしれないと考えてしまうと、私はあまり聞きたくないと思いはじめ、証拠の音声確認は後日上司に確認してもらうように依頼者に伝えた。（後日、そのICレコーダーの音声を上司と依頼者が一緒に確認し、依頼者がこれ喘ぎ声ですよね！？っと訪ねてきた部分を上司が確認したが雑音ではないか？？という結果に終わった。）

私は依頼者から調査経緯を一通り聞いた後、調査内容と方法、料金プランの説明に入った。

探偵の調査料金は決して安くはないが、依頼者は同意し、上司が望んだとおり契約を交わすことに成功した。

調査編

翌日の２３時。

早速調査に入った。

予備調査は打ち合わせを終えた後、現場に足を運び、各場所の確認を行った。

日中、でも寒い日が続く東北。

夜中となるとかなり冷え込み、より一層寒さが強まる。

私は白い息を吐きながら、調査の下準備に移った。

今回の目的は、まず本当に女性Aと接触し、自分の部屋に連れ込むのか？

確認する必要がある。

私は小型カメラを夫（対象者）と依頼者の住む自宅付近に数か所設置した。

その後、女性Aが経営する居酒屋（勤務先）を確認する。女性Aの使用する車が店の裏側にある駐車場に停まっているところを確認し、女性Aが仕事をしている事実を確認する。

まずは女性Aの業務が終わらなければ始まらない。

私は付近で待機し、女性Aの動きを待った。

調査を開始して２時間が経過し、時刻は日をまたぎ午前１時になろうとしていた。

業務を終えた女性Aが車に乗り、自宅方向に移動する。

私は女性Aの自宅が見える場所に先回りし、様子を伺う。

現場はかなりの田舎。

街灯も少なく付近は漆黒の闇。

闇に紛れ様子を伺う私はまさに忍者そのもの！

と言えばかっこいいものだが、実際はそうではない。

外の寒さで私は悶絶直前。本当に悶絶したら洒落にならん。

女性Aの経営する居酒屋と自宅はかなり近い。

移動経路次第では、車を使う必要もない距離だ。

そのため女性Aの車が自宅に到着するまでそんなに時間はかからなかった。

少し離れた位置で監視していたが、女性Aが車を降り自宅に入っていくところは視認できた。

入った後、室内の電気が点灯した様子から女性Aが帰宅したことは間違いない。

ここから夫（対象者）と女性Aに動きはあるのか？

私は寒さと闘いながら調査を継続した。

女性Aが帰宅して１時間が経過したころ、女性A自宅の室内の照明がすべて消灯している。

就寝した様子だ。

その１時間後、夫（対象者）の部屋の電気も消灯した。

やはり依頼者の被害妄想だったのか？

午前５時まで調査を継続したが、２人の接触は認められなかった。

朝方だったが付近はまだ少し暗い。

私は調査結果と警戒を解除する旨をメールで上司に連絡し、調査を終了した。