はじめに
尾行にもいろんな尾行方法があります。徒歩、車両、自転車、バイクなどターゲット(対象者)がよく利用する移動方法に合わせて、尾行方法を変えたり、状況に応じて瞬時に尾行スタイルを切り替えたりもします。
今回はその中でも、最も基本となる徒歩尾行のテクニックについてお話します。
尾行スタイル
尾行を開始する前に、まず尾行のスタイルを、明確にしなければなりません。調査内容や調査条件、時間帯、地域等により、そのスタイルを使い分けます。尾行スタイルは大まかに二種類に分類されます。
1:『ルース・テイル』
遠方から尾行し、尾行を気づかせない点に重点を置く方法。ターゲット(対象者)を見失う可能性もありますが、尾行が発覚しないことを第一に考えた尾行方法です。人通りの少ない場合、夜間、ターゲット(対象者)が警戒している場合等に行われます。
2:『クロス・テイル』
尾行発覚の危険を冒しても、尾行者を見失わないことを第一とし、極力ターゲット(対象者)に近づいて尾行する方法です。混雑している場所、調査の詰めの段階で行います。
★ 尾行する上での準備
① 尾行エリアの地理を熟知することが重要であり、これを『言うは易し行うは難し』です。地理を熟知するということは、単に地図上をの地理を理解するということではなく、バス停、レストラン、空港、地下鉄、またはターゲット(対象者)にまかれそうな場所まで熟知することを言います。
まかれそうな場所とは、ホテルやオフィスビル等の建物で、出入り口が多数あり、調査員が建物の外でターゲット(対象者)を監視しなければならないような場所です。
尾行エリアを事前に確認することで、適切な張り込み場所を決めておくことができます。
② チーム尾行をするときは、ターゲット(対象者)に接触者がいた場合、その人物を誰が尾行するか等を決めておきましょう。
③ また、チームリーダーを必ず決めておく必要があります。瞬時の判断、尾行の中止等はすべてチームリーダーの決定によるものとします。
④ 尾行中の相互連絡は、携帯電話(スマートフォン)や無線機を使用します。
⑤ ターゲット(対象者)の情報をできるだけ収集することが重要です。仕事内容や趣味、習慣、宗教、立ち寄り場所、近々の用事等の情報により、ターゲット(対象者)が時間帯によってどこにいるか判明させられる可能性があります。これらの情報は、ターゲット(対象者)を見失った場合、次にどこに現れるのか推測する重要なカギとなります。
⑥ 服装を替えることは、ターゲット(対象者)の目を誤らせる基本的かつ有効的な手段であるので、数種類の服を準備しておくと良いでしょう。
★ 尾行テクニックとタクティクス
① できるだけターゲット(対象者)と目線を合わせないようにします。もし目線があっても、急に目線をそらしたりしてはいけません。目線を合わせないようにするためにも、道路の反対側から尾行すると良いでしょう。
② ターゲット(対象者)が電車、バスを待っている場合は、追尾者はターゲット(対象者)よりも先に乗り込むことにより、尾行の発覚を逃れることができます。乗車後は一番後ろの席に乗り込むようにし、ターゲット(対象者)の視野から消えることです。
③ ターゲット(対象者)が電車、バスで尾行をまく方法として考えられるのが、ドアのそばに乗って、ドアが閉じる瞬間に飛び降りる方法です。もし、その手にかかった時は、次の停車駅で降りて、次の電車、バスを待つと、ターゲット(対象者)が乗っている可能性があります。
④ 数か所の出入口がある建物に入った時、すべての出入口を監視できる場所を確保できるならば、そこで張り込みのが一番ですが、そうでない場合はターゲット(対象者)の後ろを追って建物に入るしかありません。この場合の注意点は、ターゲット(対象者)は追尾者の有無を確かめるために入ってすぐに出る等して、誰が後ろを追っているのか調べようとしている可能性があります。
⑤ 建物はホテル、レストランなど多岐にわたりますが、まずターゲット(対象者)の目的を見極める必要があります。ターゲット(対象者)が食事をとるのか?飲み物だけ注文したのかで対応が変わってきます。いずれにせよ、ターゲット(対象者)を監視するために同じレストランに入った時は、いつでも店を出られるように先に支払いを済ませておく必要があります。
またターゲット(対象者)が女性で尾行者が男性の場合、デパートの下着売り場、女子トイレ、化粧品コーナーなど、尾行が難しい場所が多くあります。いかにも買い物に付き合っているように装うか、すべての出入口をチェックできる位置に張り込んで、誰かを待っているふりをすると良いでしょう。
⑥ 繁華街、尾行の発覚を逃れたいときは、泥酔の男を装います。例えば道に寝転がる、嘔吐するふりなどのパフォーマンスをすれば嫌なものを見たくないというターゲット(対象者)の心理により、自然に視線を避けることができます。
状況判断
シーン①:エレベーターに乗る場合
対象者(ターゲット)に関する情報が十分であれば、何階で降りるかわかる場合もあります。もしそうでない場合は、対象者(ターゲット)と一緒に乗ります。降りたら対象者とは反対方向に歩き、適当な事務所、部屋等に入るふりをしながら、対象者(ターゲット)がどこに向かっているのか監視します。
エレベーターで尾行する方法にはもう一つあります。対象者(ターゲット)がボタンを押す前に、一番上の階のボタンを押します。対象者(ターゲット)がエレベーターから降り、ドアが閉まる直前に『開』ボタンを押して降り、どこに向かうか監視します。
シーン②:対象者(ターゲット)の歩調が変わった時
対象者(ターゲット)は、歩く速度を変化させることによって、誰が尾行しているか試すことがあります。対象者(ターゲット)のペースに合わせたら最悪の事態を招くことになります。通りを横切って、その場所から対象者(ターゲット)を見失わないようにします。対象者(ターゲット)が走り出すこともあり、この場合は単独尾行で発覚することなく尾行することは不可能になります。どうしても単独尾行をしなければならない場合は、車道に出て駐車している車の影に隠れながら尾行するなど、なるべく対象者(ターゲット)に見られないように尾行します。
シーン③:対決
対象者(ターゲット)が突然振り返り、追尾者を訊問する状況が発生するかもしれません。もしそうなったら『知らない』の一転張りで通し、調査を中止します。この場合で最も大事なことは変な言い訳をしないことです。
シーン④:護衛がいる場合
護衛は対象者(ターゲット)に尾行者がいないかどうか見張っていると考えて良いでしょう。単独尾行ではとても不利な状況です。まず護衛がいるかどうかの発見に全力を尽くすこと。確実に護衛がいることを視認した場合は、最悪の場合はその護衛を尾行すれば対象者(ターゲット)の行き先を判明させることができます。
シーン⑤:他者と接触した場合
単独尾行の時に、対象者(ターゲット)に接触者があった場合、対象者(ターゲット)とチェンジして接触者を尾行する場合もあります。チーム尾行の際は、二手に分かれる等、指令に従って尾行します。
シーン⑥:人通りの少ない場所
対象者(ターゲット)が尾行者を確認するために、人のいない場所を通ることがあります。追尾者が発覚を避けるために、対象者(ターゲット)との距離を置こうとする行動をとることにより、見失う可能性が高くなるからです。また、対象者(ターゲット)が物陰に隠れて追尾者を見ているかもしれません。これに対処する方法として、当該エリアの外側を回り込む方法もあります。平行している通りを行くか、駐車場など対象者(ターゲット)の視界に入りにくい場所を利用し尾行します。複数での尾行の場合は、もっと容易になります。ただし、地理を把握していないと難しい技術です。
[…] ← 前へ 次へ → […]
[…] 周りに溶け込みひっそりと!徒歩尾行テクニック2選!! […]