前回の記事:探偵と法律③
民法③
③ 子の親権・監護権について
(Ⅰ)親権とは
未成年の子供がいる夫婦が協議離婚をする場合、離婚後の親権者(法定代理人)を夫婦のどちらにするか、離婚前に決めなければいけません。夫婦のどちらが親権者になるか協議で話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所へ親権者を定める調停、又は審判の申し立てをすることになります。判決離婚の場合、家庭裁判所が職権で父母の一方を親権者と定めます。
親権とは法律的に『身上監護権』と『財産管理権』とに分類され、具体的に、子供が一人前になるように、身の回りの世話、教育、躾や身分行為の代理人になる『身上監護権』と、子供に代わって子供名義の財産の管理や、財産に関する法律行為を行う『財産管理権』となります。但し、親権を持たない親も子供の扶養義務はあります。
(Ⅱ)親権者を決める基準
基本的には夫婦の話し合いで決めますが、親のエゴ、どちらが離婚原因を作ったかなど、意地の張り合いで決めるべきではありません。
離婚の原因を作った有責配偶者だからと言って、親権者になれないわけではありません。どちらの親で育てられた方が、経済的、精神的に安定した生活環境を過ごせ、子供の福祉、教育、などの利益になるかを最優先に考えるべきです。
まだ子供が乳幼児の場合には、母親と一緒に生活する方が、保育上、自然であることが考えられ、80%以上は母親が親権者・監護者なっています。
子供がある程度の年齢に達した場合は、子供の意思を尊重され、子供が15歳以上の場合は、子供の意見を聞く必要があります(家事審判規則54条、70条)
但し、子供に親権者の決定権があるわけではありません。子供が20歳を過ぎたら、親権者を指定する必要はありません。
* 子供が複数いる場合
子供が複数いる場合には、それぞれ親権者を決めていきます。但し、子供全員の年齢が低い場合、兄弟姉妹が一緒に生活したほうが、人格形成の面からも良いと考えられ、一方の親に親権を統一することを原則としています。
* 母親が妊娠中に離婚した場合
母親が妊娠していて、子供が生まれる前に離婚した場合、親権者は母親になります。但し、出産後に協議により親権者を父親に変更することも可能です。
* 親権者が死亡した場合
親権者が死亡した場合、もう一方の存命している親が自動的に親権者になるわけではありません。この場合は『後見人』が立てられます。未成年の子供の後見人は、親権者の遺言で指定されていればその者が、指定されていなければ、子供の親族や利害関係者の請求によって家庭裁判所が後見人を選任することになります。但し、もう一方の存命している親が家庭裁判所に、親権者変更の申し立てを行うことは可能です。
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一般的に子供を引き取り育てる側が親権者と監護者を兼ねていますが、親権の『身上監護権』の部分を切り離して、親権者とは別に監護者を定めることもできます。
例えば、父親が親権にこだわり、親権者になれないと離婚はしないと主張し、話がまとまらなかったり、父親を親権者と定めたとしても、現実は父親には仕事や出張もあり、日常の子供の監護教育ができないケースもあります。このような場合、父母の話し合いで父親が親権者として子供の法定代理人・財産管理などの行為を行い、母親が監護者となって子供を引き取り、子供の身の回りの世話や教育を行うことができます。
監護者の決定が、夫婦間の協議で話し合いがつかない場合には、家庭裁判所へ監護者を定める調停、または審判の申し立てをすることになります。家庭裁判所では子供の福祉を最優先に考え、どちらで生活したほうが、子供が幸福であるか判断します。仮に父母共に経済的、健康的な事情で子供の監護教育ができない場合は祖父母やおじ、おば等でも良いとされています。
母親に生活力があれば、監護者として認められるケースも多く、特に子供が乳幼児であれば、特別な事情がない限り、現実に監護している母親が監護者として適していると判断されます。
もっとも親権者と監護者を分けるのはまれで、子供の氏やその他の問題もあるので、やむを得ない特殊な事情がある場合に限られます。
(Ⅳ)親権も監護権も持たない親
親権も監護権も法的な決め事であり、親権や監護権を持たない親でも子供の扶養義務はあり、子供をどのように育て教育するか意見を言う権利もあります。また子供を引き取り育てる側へ対して『面接交渉権』も要求できます。