前回の記事:探偵と法律②

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民法②

② 離婚

離婚とは婚姻関係解消の一形態で、夫婦の生存中になされる婚姻解消をいいます。離婚を認めるかどうかについて、歴史的にさまざまな段階がありキリスト教国では、長い間認められず、19世紀の後半になり近代的な離婚法ができました。我が国では、棄妻(きさい)的離婚、即ち妻を捨てるような離婚が夫だけの権利として認められ、妻の側から離婚請求は出来ず、その代わりとして、縁切寺(えんきりでら)、駆込寺(かけこみでら)という救済手段がありました。

(Ⅰ)離婚の形式と要件

現在、我が国では、離婚の形式として、協議離婚、裁判離婚、調停離婚・審判離婚が定められています。

1 協議離婚

夫婦は、その協議で離婚することができる(763条)。協議とは話し合いのことであり、それに基づいて婚姻を解消させることを協議離婚といいます。

a 離婚意思の合致があること。

脅迫、詐欺等で無理やり相手に承諾されても有効な合意とはなりません。

b 離婚の届出がること(764条)

届出時に離婚意思が存在しなければならないのは、婚姻届の時と同じです。

* 離婚届不受理申出制度

離婚届作成後に気が変わった時、または、無断で離婚届を提出されそうなときは、受理されないようにしておく必要があります。なぜなら、婚姻届のところでも説明しましたが、一度受理されてしまうと、その訂正に裁判所の判決が必要になり、煩雑な不受理申出を本籍地市区町村長に対して行われなければならず、その有効期限は6ヶ月となっています。

2 調停離婚

当事者間で離婚の協議が成立しないときに、家庭裁判所へ調停の申し立てをします。当事者間の協議が不調だからと言って、いきなり裁判離婚に進むのではなく、まず、調停手続きをすることになっています。これを調停前置主義(家庭裁判法17・18条)といいます。調停が成立すれば、その時点で離婚が成立します(家庭裁判法21条)。

3 審判離婚

家庭裁判所の調停に代わる審判で離婚を成立させることを指し、調停過程で離婚が相当と考えられるとき、家庭裁判所が調停委員の意見を聞いた上で、強制的に調停を実現することをいいます(家庭裁判法24条)。審判後、2週間以内の異議の申し立てがないときは、離婚が成立します(家庭裁判法25条)。

4 裁判離婚

夫婦間で離婚の協議が成立しないときに、一定の原因に基づいて裁判所(家庭裁判所)に離婚の請求をし、裁判所が婚姻関係を解消させることを裁判離婚といいます。

離婚原因(770条)

a 不貞行為

夫婦の一方が、配偶者以外と任意に性的交渉をもつことをいい、相手の任意性は問題とならず、夫が相手を強姦した場合も含まれます。

生活の必要上、妻が売春行為をした場合不貞行為となります。

b  悪意の遺棄

夫婦の共同生活を不法に破壊し、同居、扶養を拒むことをいいます。

c 3年以上の生死不明

夫婦の一方の生死がわからないこと。これは配偶者の生死が3年以上不明であれば、夫婦関係の実態は存在せず残存配偶者に離婚の請求を認め再婚の道を開いたものである。

d 強度の精神病

夫婦の一方が、強度の精神病にかかり回復の見込みがない時を言います。最高裁判所の判例では、病人の将来の生活について不安がない時に限り、離婚を認めているようです。

e その他婚姻を継続し難い重大な理由

種々さまざまな事由がありその全部を列挙することは不可能ですが、主要と思われるものを以下に挙げます。

① 配偶者の同性愛(異性愛は不貞行為となりaに該当する。)

② 夫の同意なしの人口授精

③ 嫁または婿いびり

④ 配偶者による暴行、虐待または精神的虐待(口をきかない、性交渉拒否等)

⑤ 配偶者の犯罪行為又はその結果としての服役

⑥ 配偶者の過度の宗教活動

* 特殊な問題として、有責配偶者(離婚の原因を作った者)離婚請求が認められるかどうかというものがあります。

自ら婚姻関係を破壊する行為を行ったものが、それを根拠として離婚請求するのはクリーン・ハンドの原則に反し、道義的に許されないとする考えがある反面、既に破綻してしまった婚姻関係を継続することは無意味なので、無責配偶者の不利にならないよう財産分与等の救済手段があれば、有責配偶者からの離婚請求を肯定する主張もあります。

(Ⅱ)離婚の効果

一般的効果として、同居、協力、扶助の義務がなくなり、氏を改めた者は復氏し、再婚が可能となります。

財産的効果として、婚姻中に生じた夫婦の財産関係の清算たる財産分与(768条)があります。これは、婚姻中に夫婦が形成した財産を婚姻関係の終了に際して分割清算するものと考えればよいでしょう。もちろん、家事に従事していた専業主婦であっても財産形成に協力したものとして評価されます。

さらに、慰謝料の問題があります。これは、有責配偶者が離婚に際し、相手方の精神的被害をカバーするために支払うもので、本来は、不法行為の問題であるものの、判例は財産分与(768条)の条文にある『一切の事情』に慰謝料を含むとしているので、財産分与として取り扱うことになります。

また、慰謝料は、有責配偶者の相手方に対しても、純粋に不法行為責任の問題として請求できます。当該不貞行為が婚姻関係の破綻にどれだけ影響を与えたかによって、慰謝料の請求額も一律ではありませんが、平均として50万~400万が一応の相場となります。

どれくらいの額が財産分与として支払われているかというと、平均して450万円(慰謝料と合算)となっています。

(Ⅲ)子の監護

離婚に際して未成年の子が居る場合は親権者を決めることが必要であり(81条)、養育費の問題もあります。養育費に関しては月平均子供1人につき2~4万円、2人以上の場合は4~6万円という統計がでてきます。

投稿者 りょうカン