前回の記事:探偵と法律④
民法④
④内縁『事実婚』
婚姻届を出してはいないが、事実上婚姻状態にある関係。『内縁』よりも『事実婚』と言われることが多いです。
内縁関係というのは、結婚の意思が双方にあり、夫婦同然の生活をしている男女関係を言い、夫婦同然でも結婚する意志がない場合は『同棲』といいます。結婚していない内縁、同棲では、法律の保護を受けることは原則としてできません。
ただし、内縁関係については、婚姻に準じる関係として、一定の法的保護が与えられています。夫婦の貞操義務、同居義務、協力義務、扶養義務、婚姻費用分担義務などの規定が適用されます。内縁の妻でも内縁関係を不当に破棄した相手に対して慰謝料の請求が認められています。財産分与についても、損害の補填するという理由で、請求が認められています。
(Ⅰ)内縁の不当破棄
内縁関係にあった男女のどちらかが、相手の同意なくして内縁関係を不当に破棄し、事実上の結婚生活が解消されてしまう場合は『内縁の不当破棄』といいます。
基本的に法的な婚姻関係ではありませんので、内縁関係の解消を拒否して争ったとしてもあまり意味のあることではありません。
(Ⅱ)不貞による損害賠償請求
相手の不貞行為に対しては、内縁関係といえども事実上の結婚生活を営んでいるわけですから互いに貞操義務を負っていると考えるべきです。不貞によって内縁関係を解消させた場合には、損害賠償を請求できます。また、内縁関係に干渉して、これを破壊させた第三者は、損害賠償の義務を負うことが認められています。
(Ⅲ)慰謝料
内縁を解消するにあたって、責任が一方のみの場合には、相手に対して慰謝料の請求ができます。
(Ⅳ)財産分与
2人で築いた共有財産がある場合には、内縁の解消により財産分与の対象になります。基本的には夫婦関係に準じて考えることになっています。当事者で話し合いがつかない場合には、内縁関係での財産分与請求の調停または内縁関係での財産分与請求の審判を申し立てることができます。
(Ⅴ)相続
内縁関係はあくまで法的な婚姻関係ではありませんので、内縁の妻は内縁の夫の相続人にはなれません。しかし子供は認知されている場合のみ遺産を相続できます。
内縁関係にあった夫が突然死亡し、2人で築いた財産がすべて夫名義だった場合、裁判所は『死亡による内縁共同体の解消に基づく財産分与は可能』であるとして、内縁の妻は夫の相続人に対して財産分与を請求できることを認めています。
(Ⅵ)子どもの戸籍と親権
法的な婚姻関係ではないため、子どもは母親の戸籍に入りますが、親権については母親の単独親権になります。父親が認知したとしても法的な結婚をしていませんので、その子どもが父親の戸籍に入ることはありません。
内縁関係が解消された場合でも、子どもの戸籍に変化はなく、引き続き母親が単独で親権者となります。
(Ⅶ)子どもの養育費
父親が認知していれば、母親から父親に対して、養育費の請求ができます。しかし認知していない場合には、父子関係を証明するのが大変困難であるため、あらかじめ父親に子供の認知を求めておくべきです。父親が認知しない場合には、裁判所にこれを請求することもできます。
(Ⅷ)重婚的内縁(夫婦一方が他の異性と内縁関係を結んだ場合)
戸籍上の妻あるいは夫がいるのに、他の異性と結婚意思をもって同棲生活を送る内縁関係を重婚的内縁といいます。
夫が不倫相手と内縁関係を結び不倫相手が妻子があることを知っていた場合には、妻は不倫相手に情交関係をやめるよう請求できるのはもちろん、慰謝料請求も可能です。また不倫相手は、慰謝料や財産分与の請求は出来ません。
妻のある男性と知りながら(悪意)、または知らなくても妻があるかどうか確認せず(過失)、関係を結んだ女性に対しては、普通の内縁のような、結婚に準じた保護は一切認められていません。
しかし、妻子のあることを知らずに、または夫がすでに事実上の離婚状態にあったり、単に離婚だけがすんでいない場合に、自分が正式の配偶者になれると信じて内縁関係に入った場合は、裁判例でも、善意、悪意で区別する必要があると解されるようになってきています。
重婚的内縁関係は、法律上の配偶者からみれば不法行為以外のなにものでもありません。しかし、それは夫婦の問題として解決すべきであって、内縁関係そのものは、その実態に基づいて判断すべきであり、不法行為とは別の問題であるという考え方になってきています。